耐雪桜花麗

そこらへんにいるオカンの日常。

ずっと村上宗隆を信じ続けてきたからもう書いてもいいよね

WBC、優勝できて本当に良かった。最高に感動して、涙があふれた。

実は少し前、予選リーグ終盤の頃、WBCの記事を書いた。村上宗隆の不振が続き、四番から降ろせ、村上不要説がネットを騒がせた頃だ。村上宗隆のファンで、彼をずっと応援している自分は憤り、どれだけ村上が凄いか、お前らはわかって言ってるのか的な言葉を書き連ねた。ふと読み直してみたらあまりにキモイので消した。事実村上は打てていなかったし、こんなこと書いたって説得力もないよねとブラウザを閉じた。

でも、信じてきたからこそ、今すべての結果が出たからこそ、もうこの記事書いても許されるよね?絶対村上は最終戦でホームランを打つ、あいつはそういう奴、と思ってその通りになったんだから、私はこの記事を書く資格がある(キモイ)。

 

「村神様」が2022年の流行語大賞になったとき、私が一番最初に思ったのは「やめてくれ」だった。あの時はサッカーワールドカップが日本の話題をさらい、なんだ村神様って、流行ってねえよ、ブラボーだろ?って言われるのなんてわかっていたからだ。

野球が好き、というとどんな選手が好きなの?と聞かれ「村上宗隆」って答えると、たいていの人はピンとこない感じだった。そこで村上って凄いって説明を早口でしてしまう。野球を知っている人ならわかる!って顔をしてもらえるけど、そうでない人からは大谷翔平は知っているけど…みたいな反応になってしまう。

そもそも村神様は小さな神様だった(はず)。スワローズファンがここで点が欲しい、というところで祈ると必ず応えてくれる、その積み重ねが彼を神格化していったんだと思う。

村上宗隆は、大谷翔平とは全く違うタイプの野球選手である。スワローズ同僚の塩見選手が「ムネは大きな赤ちゃん」と称していたことを思い出す。

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ベンチでは監督のようにふるまい「村上監督」と呼ばれたり、食事といえばおにぎりばかり食べる様子をインスタにあげたり、打撃とは正反対でめちゃくちゃエラーもするし(それが原因で負けるし)、ファン感謝デーには寝坊して遅刻してきたりする。大谷は弱点がどこにあるのか教えてほしいレベルだけど、こっちは隙だらけだし、時々5歳児に見えたりする。

そういう若干23歳のただの野球少年が、突然サイヤ人みたいになって漫画みたいな活躍をするところを何度も見てきた。5打席連続ホームランをはじめ、シーズン最終戦最終打席56号ホームランとか、二試合連続グランドスラムとか、漫画でも見ないような、祈りを捧げた以上のプレイが返ってくるのを見て、もう神と崇めるしかなかった。

清宮の外れ1位で東京ヤクルトスワローズに入団した村上宗隆は、スワローズの4番になるための立ち振る舞いや精神論などを、厳しく叩き込まれたという。

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もし、彼が読売ジャイアンツに入団していたら、今のような活躍ができていたのだろうかと時々考える。この5歳児が、5歳児のまま受け入れてもらい、のびのびと活躍できるチームであったからこそ、今の彼がある。

それでも、こうして三冠王として結果が出たのは今年のことで、しょうがないけど、報道で少しでも早く大リーグに行くべきとか、日本にいたらいけないとかいう記事が出てきてしまったときは、まだその時じゃない…そんな期待はきっとこの純粋な野球少年をつぶしてしまうんじゃないかと不安になることがあった。そして、追い打ちをかけるように「村神様」が流行語になり、野球を知らない人にとっても、村上=神の印象が刷り込まれてしまった。この時の村上は、独り歩きする自分像に、プレッシャーや重圧を感じていたんだろうか?

時々、村上のメンタルについてシーズン中も考えることがあった。7月、ヤクルトスワローズの主要選手がコロナウイルスに次々と感染し、離脱していったとき、村上選手はコロナに感染せず4番を全うし、「チームの中心に僕がいるということは自覚している」と発言して、ファンを驚かせ、勇気づけてくれた。

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でも、実際にはその期間中はあまり元気がなく、本当にメンタル大丈夫だろうかと考えることもあった。まだ23歳の若者が、スワローズの4番を背負い、チームの中心になろうとしている。でも、本当の心持ちはどうだったのだろうと。

そして、ホームラン55号を打った時、残りの試合数を考えると、私から見たら60本も夢じゃないような気持ちでいたが、その後打てなくなり、55号→56号に14試合も要した。あの時、見た目にはわからないけれど、ものすごいプレッシャーを感じていたのかもしれないと、初めて神と思い込んでいた村上の人間らしさについて考えたりした。

そしてWBC。開幕と同時に、大谷翔平の怪物ぶりを目の当たりにして、野球を観ているだけの私ですら戦慄を覚えたんだから、野球選手だったら、「もう自分野球やらなくていいんじゃないかな」と心がぽっきり折れても仕方ないように感じた。さらに、3番大谷、4番村上と、大谷選手の打席の後に入ることは、公開処刑のような気持になっていたに違いない。村上選手ではないが、同じ代表の山川穂高選手が心情を語っていた。

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だから、私は村上はそんな奴じゃない、と怒りを込めた気持ち悪い記事を書きそうになった。村上がここで折れて、もうここまでで良いよ、と言い出してしまうんじゃないか、もしこのまま1本も打てなくて帰ってきたら、村上のメンタルどうなっちゃうのか…そんなことばかり考えていたと思う。

でも投稿ボタンを押す前に、いや待て、それはずっと崇めてきた神に対する冒涜じゃないのか?と思い直した。村上はいつだって私たちの予想を超える展開を持ってきてくれたじゃないか、きっと決勝戦に特大ホームランを打って、全てのおいしいとこを持ってく奴じゃないか!と笑いがこみあげてきて、このWBCが終わるまでは何も言うまい、と心に決めたのだった。

 

そして、結果は私の想像を超えて、村上宗隆は準決勝のサヨナラ長打ですべての批判をチャラにした。決勝戦のホームランもよかったが、やっぱりサヨナラしたあとの2度の雄たけびが、私の涙腺を崩壊させた。ムネは弱くなかった。いや弱い部分もあったからこそ、それを力にできた。そんな安っぽい言葉じゃないと思うけど、この苦しさと重圧は、本人にしかわからないものだったと思う。

上の動画が私の公式動画で一番好きな場面だ。いやどうやったらこんなドラマティックなシーンになるのさ。やっぱり神様はいたんだ。

 

そして、栗山監督が、私の言いたいことを最も代弁してくれていた。

「多分、本人の中ではまだ、最後打ちましたけど、チームに迷惑をかけているという感じしかないんじゃないかなというね。あんな打者ではないので。本当に世界がびっくりするような打者であるという、それを僕がこのWBCで証明したいと思ってやってきた。その彼を信じる気持ちはゆるぎないものがあるし、打つきっかけをつくるためにはいろんなことをしないといけないので」

【指揮官一問一答】侍ジャパン・栗山監督、大不振の村上宗隆に「最後はお前で勝つんだとずっと言ってきた」/WBC - サンスポ

そう、世界がびっくりするような打者なんだよ村上宗隆は。去年から通してみてきて、やっぱりこんなロマンのある選手はいないし、村神様と呼ばれて遜色ない、堂々としていてほしい選手なんだ。

WBCという大きな夢は最高の形で終わった。でもまだ、野球は続くし、まだまだ彼から目を離せない。スワローズから旅経つ時が来たらきっと泣いちゃうし、喪失感が凄いと思うけど、その時が来るまで、私は何度でも神に祈るし、お布施もするだろう。そして、今年からは、堂々と「私の好きな選手は、皆も知っているあの!村上宗隆です」といえるようにしてくれてありがとう。今年も現地に見に行きます。